逆説的な時代

中世の時代。
影響力を持ったある人物を即時処刑する命令書を持った伝令が馬に乗って駆けていく。
次に死刑中止命令を持った伝令が最初の馬を追いかける。
そして3番目にこの「死刑中止命令を持った伝令」を矢で射ち殺すよう命じられた伝令が飛び出していく。

3人の伝令は皆職務に忠実であり尚且優秀であった。
それぞれがやるべきことを実行した。
結果はどうなったか?

死刑は実行されなかったのである。

普通に考えると3番目の伝令が2番目の伝令を射殺すれば1番目の伝令だけが目的を果たすはず。つまり死刑が執行されてなければおかしい。

だが実際起こった事は想像を超えたものだった。
2番目の伝令が追いかけて来た時、1番目の伝令が2番目の伝令を射殺したのだ。
1番目と2番目の伝令に命令を下した人間は対立する立場の別人だった。
2番目の伝令が追いかけてくるのを知った1番目の伝令はその目的を察して自分が受けた命令を絶対に遂行するために邪魔者を始末したのだ。

これで済めば死刑は執行されたはずだが問題は第3の伝令の存在だった。1番目の伝令と3番目の距離が離れていた為3番目の伝令は1番目の伝令を2番目の死刑を止めようとしている邪魔者だと思いこんで射殺した。

こうして「死刑の中止」を止めたはずが死刑を止めることになってしまったのだ。

この話はG・K・チェスタトンのポンド氏の逆説の巻頭を飾る短編である。

逆説にまつわる話が収録されているが、この世の中はある意味逆説に満ち溢れている。
人が危険に晒されるのは外だと思いがちだが今や自宅で急死する時代である。
これもある意味逆説と言えるだろう。

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